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∞∞ダム日記40(墓石)∞∞

5月6日(土)
明日で連休も終り。悔いのないようにしっかり遊ばねば。しかしダムも勉強
したい。
そこで、丹沢(神奈川県)へ行ってきました。小田急線秦野駅からバスで5
0分、東丹沢のヤビツ峠着。チャリンコを組み立てて出発(輪行--チャリを
バラしてバッグに入れて運ぶこと--しました)。目指すは宮ケ瀬ダムサイト
です。
        ----ルポ前半----
【湧き水】
出発後まもなく、登山者用の水場到着。
湧き水を、車で来た水グルメの人もドプドプ汲んでます。チャリンコボトル
に詰めて先へ。

【沢】
ヤマブキの黄と山桜のピンク、新緑のうすみどり、青い空、白い雲、クレパ
スの世界。椎名誠風に言えば「正しいニッポンの春」。針葉樹に押されてい
るものの、広葉樹も頑張っています。峠から降りてきて、まだペダルを踏み
込んでいません。沢沿いに下ればいいだけの道。計算どおりルンルン楽勝コ
ースです(^_^)。

小さな沢が現われ始めるのと同時に、砂防ダム(土砂の下流への流出を防ぐ
ためのダム)が目に付き始めました。幅が3メートル程度。水はチョボチョ
ボ。
「こ、こんな小さな沢に。。。」
緑の風を深呼吸。気を取り直しつつ、3つ、4つと、つい数えてしまいます。

【小川】
沢の音が大きくなったと思ったら、いくつかの沢が合流して、幅2メートル
くらいの小川になっています。

と、突然、巨大な砂防ダムが出現。幅10メートルくらい。コンクリートの
色も生っちろく、チャリンコを降りて近寄ってみると、平成6年の作。一体、
こんな所にこんな大きな空っぽの箱作ってどうするんだろう。堰堤の底に開
いた直径70センチ程の穴から水が流れでています。

その疑問は100メートル下った所で解けました。今度は同じサイズの古い
砂防ダム。土砂に埋まって、水は堰堤を越えてジャバジャバ下流へと落ちて
います。そうか、砂防ダムとはこういうものか。下から作っていって、一杯
になると、さらに上流にもう一つ作る。

ダムの高さまで堆砂(たいしゃ:土砂がたまること)しているので、ダムの
手前は一見、普通の砂利の川原に見えます。出来合いのキャンプ場にソッポ
を向いてやってきている殼しいキャンパーがテント脇で、ぼ〜っと座って水
を眺めています。実にいい風景です。
ふと足元に倒れている看板を読むと、

『   危 あぶない 険
     砂防指定地
   藤熊川藤熊砂防堰堤
 砂防ダムに立ち入ったり堆砂地域で
 遊んではいけません
              神奈川県』

一体どこが危ないんだろう? そう思いながら下へ回ると、またしても疑問
氷解。堰堤の上と下で3〜4メートルの段差がある。なるほど落ちれば危な
いでしょう。

川を管理、人を管理。ご丁寧なことです。
管理されることに馴れた人が多いキョウビのニッポン、何処がどう危ないと
いうことが分かるアウトドア人間でもなければ、キャンプ場以外でキャンプ
する人もいないでしょうから、まぁ不要な立て看板でしょうね。横たわって
いて正解です。

【ペンの恵】
実は今日はペンを(ヘルメットもサングラスも)忘れて、上記の看板をじっ
と眺めて一度は通り過ぎたのですが、すぐ先の水場で水を汲んでいたオイち
ゃんに「スイマセ〜ン」と言ってペンを借りました。
ペンを借りたご縁で、カクカクシカジカダムダムダム。
すると、オイちゃん、
「遅いよ。もうできちゃってんだから、水没するとこは代替地だってもらっ
ちゃって。反対するならもっと早く工事が始まる前にしなくちゃ。東京の青
島さんだってそうだよ。できちゃってからやめます、なんていい迷惑だよ。
でもペンあげるよ。頑張ってね」

しかし、これは、建設するか否か決定の出る前に、水没者のための生活相談
所を設け、着工という言葉を踊らせ、工事を始め、「もう反対しても遅い。
始まってしまった」と心情的に思わせる、建設省が日本各地でやってきた手
のひとつの延長なのだ。

実際は、都市博もダムも人間のやることだから、できた後でやっぱりない方
がいいっていう時だって絶対ありえる。その時は、「ごめんなさい。作っち
ゃったけど、使いません」の方がいい。

海老名(えびな)市から来たというオイちゃんに別れとお礼を告げて、先へ
と進む私の目の前に次に現われたのは、幾重にも重なる砂防ダム群でした。
また立て看板。

『この沢の上流では水資源を養い
 自然の猛威をやわらげる緑の山づくりのための
 治山工事を行なっています
              神奈川県    』

ほんの30メートル前まで「土砂流出防止のための保安林」という看板が50メ
ートルおきに立っていたのに? それをとっぱらって? ダム群?

「猛威」をふるっているのは、自然か人間か。
墓石のようにユラユラと立ち並ぶ砂防ダム群を後に、沢沿いをさらに下りま
した。
(後半へつづく)