TOP 1-100 101 - 200 201 - 300 301 - 400 401 - 500
ダム日記66(訂正)←  1995年 6月 30日  →ダム日記68(民主主義とワナ)

∞∞ダム日記67(グアテマラ)∞∞

6月30日(金)
グアテマラで出会った友達から便りが届いた。
「今年はアメーバーが大流行だ」という。水や食べ物が原因で、微生物(ア
メーバー)が身体に入り、下痢や発熱などの症状が出る。ひどい時には、食
べようと飲もうと全部水になってピーピー出る(おっと、これからお食事の
方、失礼!)。

言われのない危機感に煽られるように今、ダムを作らないで、木を切らない
で、森を壊さないで、山を壊さないで、川を守って、海を守って、と騒いで
いるのには、散歩の速度で見てきた第三世界での体験が大きく影響している。

山や野原を、電気や水道やアスファルト道路を当たり前のものとして使って
いる人には知られることのない、欝蒼と茂った木の下に小さく(グアテマラ
インディヘナは本当に小さい)暮らしている人々の集落を横切りながら歩い
た日。それが、昨日のことのように思いだせる限り、私は今やっていること
を続けます。

【文明の象徴】
小さな森や山の集落で受けた衝撃のうちの一つに「ゴミ」がある。
お菓子やキャンディを包んでいるチャラチャラという音を立てるビニールゴ
ミだ。野菜はそのまま実っているし、肉は食べないか、食べる余裕がないか、
町ではその朝3時頃から屠殺されたものがそのまま売られている。そういう
ものを包むパックは存在しない。ただ、町に行ったお父さんが、子供や自分
たちの楽しみのために買うお菓子の包みが、山中や密林の、それも集落にほ
ど近い所のみに集中して、地面を覆わんばかりに散乱しているのだ。

彼らにとって、ゴミ=不要物、それは果物や野菜の皮くらいのもので、もいで
食べたら地面に捨てるのが当たり前だ。気温が高いので、それらはすぐに分
解して土になる。腐らないゴミの概念はないし、教育もない。

彼らは、幸か不孝か、ゴミを処理するという概念が欠落したまま、ゴミ文明
との付き合いを始めた。ゴミ文明を輸出した国の人間には、ゴミ処理の概念
をも輸出しなければならない、という必要性を思い付かなかった。

彼らは、ゴミ文明社会の行方を知らない。ところが、私は未来の国(日本)
から来た人間で、その行方を知っているから、警告を発することができる、
と一瞬、思うのだ。

だが、どこに捨てろ、と言えばいいのか。燃しても埋めても、目の前から消
えるだけで、それは歴然と残っていくのだ。

【命の象徴】
先進国の後に続こうとする大半の途上国は、ちょうど、自由という概念を輸
入して、責任という概念をどこかに置いてしまった我が国のように、文明に
熱狂し、それに伴う害や危険性のことに思いを致すことができない。
私達は、子供におもちゃを渡した不完全な大人だ。
未来から来た歪なメッセンジャーだ。

森は、何としてでも守らなければならない。
ダムを作るという考えは、森を壊す、ということを何とも思わない方向性の
現われだ。

木は金にならない。森を切って石油を掘った方が金になる。森を切ってゴル
フ場を作って外国人を呼んだ方が金になる。金、金、金。私たちの子供達が
そう思い始めるのは、時間の問題だ。子供達の大半は、まだ、驚くほど、小
さい。日本にのほほんと暮らしている人間には計りしれない程に、彼らは小
さな赤子達だ。私たちは、大人として規範を示さなければならない。自分達
は金の亡者となって、子供に森(熱帯雨林)を切るな、と言っても、もう遅
いのだ。今このタイミングでも遅い、しかし、まだ間に合う。

子供達が大きくなる前に、私達は本当の大人へと成長しなければならない。
そう、私達とて、戦後50年、おもちゃに熱狂を続けた子供だったのだ。
これからの50年で、地球の運命は決まる。
あと、一世代半だ。

私達の祖先は、森から出てきた。
森の消えた文明は、すべて滅んだ。

まさのあつこ