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∞∞ダム日記71(初心表明)∞∞

初心と所信。字を間違えたわけではありません。あしからず。(~0^)/。

7月11日(火)

暑いよ〜。「徳島県木頭村(きとうそん)では36度」というお天気コーナー
をラジオで聞きました。半年前には耳に止らなかった名前。あなたの耳にも
止るようになりましたか?

あれこれ怒っているばかりで、余りにも木頭村のことをきちんと話していな
いことに、最近赤面しています。初心に返って、応援に専念しようと思いま
す。

【木頭村の森と雨の話】
以前、木頭村はその98%を森で覆われているとお話ししました。
その74%が人工林。そのまた50%余りが林野庁の指導でおこなった拡大造林
(杉などの針葉樹を植林する政策)によるものだそうです。

さて、昭和51年(9年前)、木頭村に記録的大雨が降りました。台風11号です。
1日の降水量1,114ミリを観測しました。これは日本記録です。

ちなみに、これは建設省がよくいう100年に一回の洪水という表現にあたる降
水量であると思いますが、おあいにくさま、ありがたや、下流では洪水は起
きず、中流にある既存のダムの堆砂(土砂がダムからダム上流に向かってた
まること)で河底の上がっていたダム周辺に被害がでました。

それまでダムのことをよく知らなかった上流の木頭村民の人は、こうしたダ
ムの弊害を見るにつけ、ますます、ダム反対の意思を固めたと言います。

【久井谷の話】
本筋に戻ります。この豪雨で、27ヘクタールという広大な地崩れが起きまし
た。「山ごとごっそりいった」と村の人は言います。

拡大造林だから起きたと、日本の山をあちこち見てきた人達は口を揃えてい
います。

あれだけの面積、あれだけの雨だから針葉樹であろうと広葉樹であろうと起
きたのでは、という林家の話もチラと耳にしたので、京都大学の河野正一教
授(「大規模林道問題全国ネットワーク」の代表世話人の一人で、「立山連
峰の自然を守る会」のブレインでもあります)にそう聞いてみました。

「久井谷のこと?(と、地滑りの起きた地名もスラスラと)僕、見てきまし
たよ。あれは絶対、拡大造林の杉だから起きたことだよ。ブナ林ならあんな
滑り方はしない」

宇都宮大学の藤原教授に教わったことでその裏付けのようなものは出来ます。
(やはり「大規模林道問題ネットワーク」の代表世話人。白髪でジープをガ
シガシ乗りこなし、時間と体力の許すかぎりどこへでもいらっしゃいます。

何故、こんな解説をするかというと、先日、「大学には御用学者が多くて、
お上に立てつくような有能かつ良心の学者は、一生、教授になれない」とい
う話を聞いたからです。例外も多々ある、その例を少し言いたかった。しか
し、圧倒的に少ないので、はやり、上記の先生方は、あちこち掛け持ちでお
助けマンをやることになります)

藤原先生からは、ブナが雨を吸う力を習いました。
岩手大学の村井宏教授によると、ブナ天然林は単位面積あたり400ミリの浸透
能があるそうです。林地平均で258ミリだそうです。(この「単位面積」とい
う概念が分からず、何度も聞き直して運転中の先生をテコズラセました(~_~メ)。

要するに、例えば、400ミリの雨、というと、牛乳ビンだろうと、大きなタラ
イだろうと1時間経つとどちらも400ミリたまっている、という考えだそうで
す。)

つまり、木頭村に一日で降った1,114ミリは、ブナ林であったら3時間弱で吸
収した計算です。土壌微生物が豊富で落ち葉や腐った根を分解するので、す
きまが一杯でスポンジのように水を吸います。

林地平均で計算すると4時間半。(こんな計算していいのかな)拡大造林は
葉を落とさない針葉樹林なので、それ以上かかります。

次に、根が地に踏ん張る力です。これは藤原先生が執筆した「日本の森をど
う守るか」という岩波ブックレットで見つけた数字です。

引き抜きに対する根の抵抗力のことです。直径10ミリの根で140キロ。直径29
ミリで300キロだそうです。ご存じのように、広葉樹の根は針葉樹に比べ、よ
り広く、より深く張り巡っています。広葉樹林の方が、踏ん張る力が強いと
いうことです。

久井谷は急傾斜なので、4時間半以上の雨を吸った土(あるいは吸い切れず
に表土が流れ始めた)の重さプラス、15〜40年の樹齢を持つ大きな杉自身の
重さは、雨の威力(天災)にもまして地崩れに一役買ったと言えそうです。

切ってしまった森のこと、天然ブナ林であったら、その浸透能と踏ん張る力
をもってして耐えることができたかどうかは、証明しようがないわけですが、
耐えることができる可能性は格段に高かったことだけは確かです。

それともう一つ。この久井谷の地滑り後、建設省は砂防ダム群を建設しまし
た。

林家、学術専門家が共通して強調する点は、「砂防ダムは解決策なんかでは
ない」です。「砂防ダムを作ったって、崩れるものは崩れる。崩れるのがそ
んなに嫌なら、山をコンクリートで固めりゃいい(勿論皮肉)」「これ以上
の地滑りを防ごうと思ったら広葉樹を育てることだ」と言います。でも、急
斜面では植林は難しいそうです。

林野庁もそれくらい知っていたでしょうに。駄目で元々だからとにかく(当
時)金にならない広葉樹を伐採して針葉樹を、というふうに林野庁が林家を
仕向けたのは、悲しい失策でした。

「山には砂防ダムでなく、森を育てる人を」木頭村が訴え続けていることで
す。

これをどう応援できるか、「木頭村の未来を考える会」の最初のテーマにし
たいと思います。いいアイデアがあったら、ください。木頭村に、徳島県に、
国に、税金を払う国民として提案するお手伝いをお願いします。