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∞∞ダム日記106(湖沼会議1)∞∞

10月27日(金)に書いたけど今日はすでに29日(日)

どうしたことか、最近、「○○したいなぁ」と思うとそれがすぐ実現するように
なった。突然、関心の対象が目の前に出現するのだ。

行けるはずのなかった第6回世界湖沼会議に急に24日の1日だけ行けることに
なった。ここまではさほど驚きはしなかったが、天から降ったような有り難い"
お仕事"の準備として論文概要を見ていたら、先日紹介した「墨田区の雨水利用」
をポスター発表しているではないか!

これには驚き慌てふためいて、セッションの合間にそそくさと行った。そして開
口一番聞いてしまったのは、何故か「この雨水利用の発想を墨田区で最初にした
のはどなたですか?」だった。我ながらなんとマヌケな質問だと思ったが、あん
なことを思い付いて、実行する人は凄いと思うのだ。その人のことを知りたかっ
た。すると、「私です」と発表者、墨田区職員の村瀬氏。
「おぉ〜!」なんという出くわし方!なんという感激!思わず、手をムギュッと
握りしめてしまった。
シミュレーションをしてデータを揃えるまで3年かかったそうだ。ますます凄い。

そして恐れ入ったのは、「100年も建てば皆(どの建物も)建て代わりますから
ね」という発想だ。「利根川のダム開発は頭打ち。墨田区では洪水もあり、防災
拠点でもある。屋根の水を貯めて利用すれば、一石三鳥なんですよ」という説明
に、30年や40年で寿命になるダムを作ることばかり考えている人達に「ほ〜ら見
ろ」と言ってやりたくなる。

が、いかに公益となることでも、余計な金は出せないのがキョウビの企業。
しかし、それについても説得材料(データ)がしっかりしている。
墨田区役所は、今、この雨水利用によって1500人分のトイレの水の50%を賄って
いる。年間200万円の節約となり、10年以内で元が取れるのだ。
いずれ墨田区の100%の建物が、タンクに5対5の割合で(タンクを半分空にし
ておく)雨水を貯めたら、全体で13万トンの貯水量となるそうだ!
13万トン!天を仰いで両手を広げて叫びたい気持ち!
こんなに素晴らしい一地方の一公僕の仕事を、国は吸い上げて、どんどん色々な
地方に勧めればいいのだ。「建設省の人も脱帽だと言っていた」というから、当
然、そういうプロジェクトも組んであるのでしょうね?建設省様?ん?ん?

自治体関係者から、民間、企業の人まで、雨水利用施設を視察見学に来る人が多
く、毎月開く説明会も好評、超満員だそうだ。
次回の説明会は、11月24日(金)の夕方の予定。
先日環境庁らが行なった「生物多様性11省庁意見集約集」(皮肉です。正式名称
は「生物多様性国家戦略原案」)の説明会と違って、市民が仕事が終わってから
駆け付けることができるようにという配慮がまた嬉しい!

【ロビーイング予備生?】
さて、プログラムを見ていると、日本からは行政関係者が圧倒的に多かった湖沼
会議。
うっぷん晴らしをしてみた。
「水環境保全と市民参加」の分科会で、質問に立ったのだ。

「生物多様性の保全は、水の保全と大きく関わっていると思います。日本では、
生物多様性国家戦略の策定が、政府内において、住民の参加を排除した形で進め
られています。各国ではもうすぐ11月に行なわれるジャカルタでの締約国会議
に向けて、このことはどのように取り組まれているか聞いてみたいと思います」

こう質問することによって、日本の行政関係者が、この会議においてどんなにう
まいことを言っても、「生物多様性国家戦略に関しては住民参加を排除している」
という現状を、その会場にいる人にだけでも暴露できるのではないか。この問題
に気づかなかった人やマスコミがこの問題に気づいてくれる可能性がゼロではな
い、という駄目元のイタズラ心だ。
そして各国の様子も知ることができ、これまた「ほ〜ら見ろ」とうっぷんが晴ら
せるのだ。

フィリピン人スピーカー曰く、「戦略の実施にあたって住民の参加が重要」
インド人スピーカー曰く、「戦略を実現しようと思うなら、戦略作成のための協
議のプロセスで、現状を把握するということが重要だ」
う〜ん。これぞ、日本における生物多様性国家戦略原案説明会で、NGOが口を酸っ
ぱくして何度も何度もな〜んども言っていたことだ。現状把握なしには、何の対
策も立てられない。対策を立てたって、国民ひとり一人が実施しなければなんの
力にもならない。

【Public Participation】
この「住民参加−Public Participation」という言葉が聞かれたのは、この「市
民参加」というタイトルが使われた分科会だけではなかった。

「環境保存のための行政の役割」というコマでは、石川県で辰巳ダム建設に反対
している婦人が、そこにいた環境庁水質保全局水質管理課長に、個別問題で二度
も迫った。
一度目はお茶を濁された。二度目は、座長であった建設省河川環境課の人間が
「ここは個別問題を話合う場所ではない」と質問を退けようとしたところ、建設
省の別の人間が観客席からしゃしゃり出て、「反対反対と言われても全員が反対
ならいいが、賛成している人もいるので、計画を止めるわけにはいかない」と、
とてもレベルの低いことを言った。
顔がカ〜ッと熱くなった。この会議の主催国である日本が、水辺の環境の保全と
いうことを話し合う場において、賛成する人間が一部にいるからダムを作るとい
う発言をするなんて、他の国の人の手前、とても恥ずかしいと思った。

もっとも、この婦人の質問の仕方は、この場では確かにやや片寄り過ぎていた。
しかし、こんな場でもなければ、中央省庁に向かって疑問をぶつける機会が、意
見を募らせている個人には確保されていない。そういう一端を露呈した場面だっ
たのだ。これは彼女だけの問題ではない。私には彼女の焦る気持ちが痛いほどに
よく分かった。

そのセッションが終わって彼女の所へ近寄った。
「私は細川内ダム問題のある木頭村を応援しています。情報交換がしたいので、
ご連絡先を教えてくださいませんか?」
彼女は、「まぁ!」ととても嬉しそうに、しかし、恥ずかしそうに「なんだか焦っ
てしまって、まとまりのない質問をしてしまって、私ったら、あんまりこんな所
にこないもんだから」とノートの端に住所を書きながら、少しいたたまれない様
子で言った。
こういった場所では、どういう風に質問をしたら効果的か、逆効果にならずに済
むか、ということについて、少し話をしてみたかったのだが、彼女の様子を見た
ら言えなくなってしまった。
私だって、初めて人前で、「官僚」というものに疑問(質問)をぶつけようとし
たら、「意見」をぶつけただけで終わってしまったのだ(それは生物多様性の第
一回の説明会の時だった)。だけど、これは経験や失敗を通していくらでも学べ
る。未経験な素人には作戦が必要だ。ちょっとしたことを念頭におくだけで、
「質問」は、非常に効果的な発言として使えるのだ。
あとで、お手紙を書こう、そう思って、その場は立ち去った。

さて、この婦人の質問が押さえ付けられた後、もう一人のカナダ人座長が、閉会
の挨拶で、いきなり、「この湖沼会議で、繰り返されてるキーワードは、Public 
Participationだ」と言い放った。くだくだと説明はしなかったが、せっかくの
市民からの発言を生かそうとしない日本の官僚に対する無言の抗議だと感じて、
ほぞがおりた。

どんなに的を得ていない質問でも、市民からの声には、たくさんのメッセージが
込められている。すべては「学びのプロセス」なのだ。カナダ人の発言は、市民
の成長を促す思いやりに満ちたものだった。

長くなってごめんなさい。
まさのあつこ