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∞∞ダム日記115(京大山口君への手紙)∞∞

11月14日(火)
サイクリングに参加した山口君から4通目のメールが来た。3通目を「ダム日記」
で転載させてもらっていいかどうかの返事だ。

>僕のメールと名前のことですがどうぞ使って下さい。
>フルネーム出しても構いません。
>ダムや水のことはもっと勉強していきたいと思ってます。
>そして自分なりのオピニオンを持てるようになったらいいなと思ってます。

お〜し。お姉さんがそのための情報をどしどし提供しよう!

さて、山口君がバキッとこのような元気の出るメールをくれるまでのメール1往
復を、ここに明らかにさせていただく。
山口君は、ダムに関し、良識ある日本国民の平均的な印象と経験を持っている。
私がダム日記で語りかける相手は日本全国の無数の山口君だ。

まずは、山口君と木頭村の出会いの部分。
>11月4日,皆さんと別れた後,細川内ダム建設予定地の少し上流の川原で川に
>見とれていました.30分か,あるいはそれ以上だったかもしれません.青い水
>や,水がつくる渦や,水の流れや,聞こえる音は水の音だけという事実に,飽
>きずにながめ続けていました.

うん。そして山口君とダムとの出会い部分。

>ダムについては個人的にはよく判りません.きれいな川が残っていて欲しいと
>は思うけど,ダムは必要ないと言い切ってしまうのは偽善的なような気もする
>し,かといって洪水になっても,水不足になってもいいからダムを作るな,と
>は都会で快適な生活を送っている立場の私からはとても言えないし.でも木頭
>村の人たちは本当に素晴らしいと思いました.

レッスン1と称して書いた私の返事。大筋をここに書く。少しいじる。

【山口君への手紙】
そうそう。みんなこんな気持ちなんですよね。
だけど、これは昭和40年代の感覚なんですよ。堤防が強化され、人口増加が下火
になり、水を多量に使う高度成長重工業の時代は終わった。どんどん生物が絶滅
していっている。そうして生態系がくずれれば、皺寄せは、将来の自分達の子供
や孫に行く。
>都会で快適な生活を送っている立場の私からはとても言えない
という普通の感覚の人こそ、今気づいてもらわないと、困る。

関心を持ちにくい面白くない分野だし、普通の生活をしていると気づきにくい部
分だよね。でもやっぱり木頭村で見たような魚がウジャウジャいる川をこれから
生まれてくる人達にも見せたいもの。地球はきれいだよねぇ、って言いたいもの。


さて、洪水に関しての誤解を解くよ。レッスン1です。
1.ダムは洪水の解決策にはならないこと。
 よしんば、雨が、ダムがある所に降ってくれたとしましょう。運よくダムが空
になっていれば、ある程度は雨水を貯めることができます。空でなければ、越流
や決壊しないように、入ってきた水を放流しますから、何の役にも立ちません。
今回見た那賀川沿いにあった3つのダムはほぼ満杯でしたね。あれでは、洪水の
時には役に立たないのですよ。長雨なら尚更、ダムはすぐにあふれて機能しませ
ん。

2.では、もし人間に洪水という天災を防げるとすれば(と前置きをした上で)、
効果があるのは、
 A.堤防を強化すること(細川内ダム計画に関して、徳島選出国会議員に「治水
なら堤防を強化すれば?」と聞くと、「用地買収に金がかかり過ぎるからできな
い」と言った。木頭村は安いからダムに沈めてもいいって理論?)
 B.上流にダムを作るよりも、中下流で、アスファルトやコンクリートで水が土
に染み込まない状況を打開して都市型洪水を防ぐこと。(屋根に降る水を都市で
きっちり貯水すれば、利水にもつながる。)
 C.ダムを作る代わりに、そっくりそのお金を「保水力のある山」を育てること、
「山を守る人」を育てることに回すこと。ダム事業見直しの審議委員会というも
のを建設省はやりたがっているのですが、こういう試算も明らかにしてもらいた
いですね。提案書を作ってみることにしよう。

3.ダムができると洪水は起きるという構図はあまり知られていない。
ダムを作るため山を崩す。土砂がどんどん出る。土砂がダムを埋め、浅くなって
貯水機能が低下する。バックウォーター(ダムより上流部)の川底も浅くなる。
大雨が降る。溢れるので放流する。すぐ下にもダムがあって川底が浅くなってい
るから溢れる。洪水の大被害が起きる。「下流を守る」という根も葉もないプロ
パガンダで説得されて犠牲になる。ダム操作に「責任なし」と、泣き寝入りさせ
られる。
そしてそのことを都会の人間は知らない。

水不足の誤解を解くよ。
1.水不足とはつまり、雨が降らない状態のことだ。つまり、ダムがあろうとな
かろうと、雨が降らなければ水は不足するのが当たり前だから、水不足のために
ダムを作るというのは、めちゃくちゃな理論なのだ。ダムに水が貯っていれば仮
に一週間はいいとして、ダムを空にしていれば、1日だってもたない。
洪水の説明と同様で、「雨」という自然を相手に「人間が操作するダム」には何
も「責任」を期待をしないほうがいいというのが、まともな脳味噌のすることだ。
さて、くだんの国会議員にこのことも聞いた。
まさの「今年あの地域は90日っていう渇水で、ダムが空になりましたよね。貯水っ
て言いますけど、雨が降らなければダムを何個作ったって無駄じゃないですか?」

議員「無駄じゃない」
ま「どうしてですか?」
議「今あるダムの貯水機能が低下しておった」
ま「その機能を先に回復させるのが先じゃないですか」
議「だから新しいのが必要だ。新しいのを作ってせき止めて、その間になんとか
する」
ま「それだったら今年なんか空っぽになった日が何日かあったんですから、その
隙にダッと行って土砂をかいだら良かったんじゃないですか?」
議「捨てる所がない」
あっけ。こんな話で40分が過ぎたんですよ。

しかし実は新谷(あらたに)という谷がその候補に上がっている。谷そっくり土
砂とヘドロで埋める計画が本当は秘かに進行していたのだ。希少生物が5種いる
ことが分かっている。徳島では猪俣さんという方が闘っている。山住さんという
方も闘っている。守るために闘っている。破壊しようとする者の子孫を守るため
にも闘っている。
こんな時に生物多様性国家戦略がしっかりしていたら武器になるのに。。。。
今のままでは使い物にならない。トイレの紙にさえ使えない。

2.山には、水の自然調節作用がある。川には大抵、最低二つの流れがある。普
通に私達の言う「川」と伏流水だ。後者は山に100年前に降った雨水がだんだん
に地下水となって降りてきて下流まで届いた地下の川だ。山は水を含んで徐々に
水を流すので、多少、雨が降らなくてもチョロチョロチョロチョロと川にも水を
供給しつづけている。だから、少しでも保水力のある山にすることが水不足解消
にも役立つ。それには、たっぷりと水を含むことのできる腐葉土を作る木、つま
り広葉樹を植えることが水不足解消に役立つということになる。基本は雨と山と
川なのだ。ダムとダムとダムではない。

山口君たちの成長を楽しみにしています。

まさのあつこ