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∞∞ダム日記215(因果関係)∞∞
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今日初めてダム日記を読まれた方へ
これは、ダム問題を克服する途上にある徳島県木頭村(きとうそん)
のための応援日記です。
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11月3日(日)
法務省人権擁護局の調査課に提出した「第1回ダム事業関連人権侵害調査報告」
の4ページ目の下段です。
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(4)死亡の事例
○岡山県のダム推進班長は過労で急死 S.59年1月、
(RSK報道特別番組「甘柿・渋柿」苫田ダム前夜 昭和59年6月24日放送より)
○「(岡山県)知事の命令のもとにこういった非人間的な業務にしたがわねばな
らない県職員の中には、ジレンマに陥り、良心的に深く悩む人もかなりあっただ
ろう。ある高級幹部はついに自殺した」(「ダムとたたかう町」手帖舎より)
○徳島県木頭村助役 ダム無し振興策推進中自殺 H. 8年9月
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜4ページ目以上〜〜

苫田のことは問題の存在だけを挙げるだけにした。岡山で亡くなられた方の冥福
を祈ります。
木頭村の助役のことは、「報告」という響きの中では書けませんでした。
なぜ人権擁護局に電話したか、なぜダム関連の人権侵害調査をしようと思ったの
か私個人の気持ちを書いたダム日記205と206を事前にFAXで送っただけです。人
の死を「アピール」する気持ちになれなかった。この辺が私の弱さだと思う。

人権擁護局の方が言うには、「(いじめ問題で学校やその責任者である校長に対
する説示ということがあり得るように)ダム事業と人権侵害の因果関係がつかめ
れば、ダム事業者に説示するということもありえるでしょうが・・・」というこ
とだ。
しかし、20年30年という長い間、自分の住んでいる村や川がダムで消滅するかも
しれない消滅しないかも知れないという一種異常な状況下で暮らし、その結果現
われてくる事象や行動と、ダム事業そのものの因果関係をつかむのは難しい。
難しいが、確かに因果関係はあるのだ、と説明しようとする私の言葉は、感情論
の域をでなかった。

「例えばですね、20年も30年も自分の所が沈むのか沈まないのか分からない。家
を改築しようかな、と思っても沈むんなら無駄だなと考えたり、できないかもし
れないと考えたり、何をするにも、何をやろうにも、ずっとダムのことが頭の片
隅にあって、生活設計が立たない、そんな中で暮らしていく、そういう状況なん
です。想像していただけますか?一時が万事、ダムのことが頭のどこかに絶えず
にある。自殺とか妨害とかビラとか、現われてくる行動はそういうものの積み重
なりで最後のものなんです。因果関係と言ってもこういうものはつかみにくいと
思うんです」

涙が出そうになった。因果関係などつかめやしない。それすらうまく説明できな
い。その時脳裏にあったことを書き出すとこんな具合だ。
人権問題を理解した人でも、ダム事業の根本的な問題を理解しないままでは、問
題の根を掘り当てるどころか、調査の必要性すら理解してもらい難い。一体どう
したらいいだろう・・・。
「おっしゃろうとすることは僕は理解できたと思います」一人の担当者にかけて
もらった言葉に少し安堵しながらも、悲しいほどの「縦割り」を肌で実感した。

河川行政担当者は河川行政しか頭にない。河川局開発課に行って、人権を擁護し
てくれ、と訴えても擁護されることはないだろう。彼ら開発課の任務は、事業を
推進することだ。
また、人権擁護局の任務は、人権が擁護されるべき人を擁護することであって、
人権が侵害される根本原因となっている「制度を解明し改善すること」ではない。


この二つの部局が連係して、「人権を侵害しないダム事業」を実現することは無
理なのだ。この概念は、人の希望や常識として存在していても、法律に職務とし
て書かれていない。だから実現されない。これが法治国家における「縦割り行政」
か。「人権を侵害しないダム事業」という言葉は人の頭の中にしか存在しない。
ユートピアなのだ。

大袈裟に言えば、「法治国家という世界の冷酷さとの遭遇」。
ページが一枚めくれた、という気がした。

夏に参加した「立法学」の合宿で、法律初心者の私が感じ取ったこと。
法律とは、人が傷つけ合わない社会、人が幸せになるための社会を作るための決
まりだ。それ以上のものではない。それ以下のものでもない。

機能させるには、どうすればいいか。ひとつひとつ片端から法律を変えていくこ
とだ。法治国家であることは救いだ。「血を流さずに、殺し合わずに革命を起こ
すことが可能だ」(尊敬する先生の言葉)。
しかし、私の立場で「今」できることはなんだろう?縦割りでなく、省庁が横に
つながってくれるために。。。
頭の中を開けたらそんなふうなことを考えていた。口を開けたらこんなだった。

「(建設省)河川局開発課の方達と、意見交換会を持ってくれませんか?」

まさのあつこ