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∞∞ダム日記223(漁師とエイズ)∞∞

11月19日(火)
岡山で苫田ダム建設に反対している「緑川人フォーラム」の人達が、先週末、10
人ばかり、徳島の木頭村と吉野川を訪れたそうだ。ダム問題の先輩と後輩で交流
があるのは素晴らしい。どんな運動でも、どんな人生でも、孤立や孤独が一番の
敵(心で感じる負け)だと思うから。弱い人達が集まればそれは強さに変わる。

木頭村の那賀川もさることながら、同じ徳島の吉野川を見た人は、誰でも、あの
川を好きにならざるを得ない。徳島行きに参加した岡山の北川さんが、大きさに
感激したというみあげ話をしてくれた。
どのくらい雄大かというと、下流で、本流が2本に分れ、さらにその支流も分れ
て合計3本の川になるのだけど、その3本ともが、なお「一級河川」であるほど
だ。

【徳島の水俣病を回避しようとする一人の漁師】
実は、そのうちの一本では、重金属に汚染された工場排水の問題が起きていてい
る。
賀川さんという、河口の浜辺で一軒だけ残っている漁師さんが腹をくくって、こ
の問題にSOSを送り始めた。夏の終わり頃だ。「水質調査をして欲しい」というS
OSだった。

賀川さんによれば、地元の漁師さん達は、もうだいぶ前からその場所では魚を取
らなくなっている。魚がおかしくなっていることを知っているからだ。正常な魚
が取れる所へと移動したり、補償金をもらって漁師をやめたりしている。

10年後には(早ければもっと早く)、海まで駄目になるという。しかし、魚が売
れなくなる(現在問題の箇所では誰も魚は取っていないが)、税収が減る、排水
を出している企業からの研究資金への寄付がなくなる、販売部数を減らされる、
などを怖がって、賀川さん以外の誰も、漁師も政治家も大学もマスコミも取り上
げてくれない、と言う。賀川さんも相当悩んだ末、声をあげることにした。吉野
川の運動をやっている一部のメンバーがこの手伝いをしている。

問題の深刻さを理解してもらうために釣って撮影した奇形の魚の写真を見せられ
た。
水俣病をやった学者さん達に協力を呼びかけてみては?など、アイデアを提供し
たが、すでにそれも試み済みだった。水俣病をやっている学者さんは、まだまだ
水俣の方だけで手一杯だとのことで(政府はハコモノの公共事業に注ぎ込むお金
はあっても、人間を守る調査や研究には人もお金も十分に使わないのか?)、別
の筋から水質調査の協力者を探すと言っていた。
町や県のお金で調査してくれないのか?と言ったら首を振って諦めていた。

【徳島はエイズの二の舞を踏むのか】
その後、このことが大きく徳島で大きく取り上げられたという話は聞こえてこな
い。徳島の円藤知事が11月18日に発表した「県重要要望86項目」の中にも、相変
らず細川内ダムや第十堰のことはあっても、このことは入っていないようだ。
大規模公共事業に関して「安全などをどう確保できるか」などと言っている。
「安全」をキーワードに持っているのに、神奈川の私の所に聞こえてくる徳島の
漁師のSOSが聞こえて来ないのか?
税収が減ること、命の確保と、票の確保と、そんなことが天秤にかけられるのは、
エイズだけでたくさんだ。

私自身も、外から行って吉野川の大きさに感動した北川さんの話を教えてもらう
まで、いつもどこかで頭をかすめながら、どのように書いたらいいのやら、書き
あぐねていたが、吉野川の雄大な眺めを思い出したら、急に目が覚めた。

円藤知事、SOSに耳を傾けてください。
今、これを読んでいる研究者やジャーナリストの方、このテーマに詳しい人がい
たら、ご協力お願いします。私には、まだジャーナリストとしての即戦力があり
ません。
こういう問題に各地で遭遇して、木頭村とダムのことだけを書いていたのでは、
間に合わない、それが、ジャーナリストに来年からなる、と宣言をし始めた理由
です。
多くの政治家も、マスコミも眠っている。
起きているのは、苦しみで眠れない者だけだ。

まさのあつこ